コラム

本物のレンガと「レンガ調」の外壁は何が違う?素材を選ぶ前に知ってほしいこと

株式会社池芳工務店代表取締役の池田です。

私には、学生時代から忘れられない光景があります。

ワンルームに住んでいた友人が、「うち、フローリングなんだよね」とうれしそうに話していました。当時は、床がフローリングの部屋が人気だったころです。ところが遊びに行ってみると、床はフローリングの柄をプリントしたクッションフロアでした。

友人が好きだったのは、フローリングの「柄」だったのでしょうか。それとも、木という「素材」だったのでしょうか。家づくりの仕事をするようになってから、私はこの問いを何度も思い出します。

この記事では、レンガ調のサイディングやレンガタイルと、本物のレンガを積んだ外壁の違いについて、私の考えをお話しします。どれが正解かを決めたいわけではありません。家の素材を選ぶ前に、一度立ち止まって考えるきっかけにしていただければうれしいです。

フローリングが好まれるのは、柄ではなく木の質感

フローリングが好まれる理由は、木目の模様そのものではないはずです。踏んだときのやわらかさや温かみ、年月とともに深まる色つや。木にしかない質感や高級感があるから、多くの人がフローリングを選ぶのだと思います。

クッションフロアは、塩化ビニルなどでできたシート状の床材です。フローリングの柄を印刷したものも多く、見た目は木の床に近づけてあります。けれども、木の質感までは写し取れません。

もちろん、クッションフロアにはクッションフロアの良さがあります。水や汚れに強いので、トイレや洗面所のような水まわりに向いていますし、費用を抑えやすく、張り替えも手軽です。どちらが上ということではありません。私が言いたいのは、フローリングと、フローリング柄の床材は別のものだということです。

無垢材の床と木の内装のリビング
※IKEHOUSEで建てた家(施工事例より)

そして私は、同じことが家の外壁にも言えると考えています。

レンガに見える外壁は、大きく分けて3種類

「レンガの家」と聞いて思い浮かべる外観にも、実はいくつかのつくり方があります。見た目は似ていても、中身はまったく違います。まずは整理しておきましょう。

種類 どんなものか 主な特徴
レンガ調サイディング セメント質の板などの表面に、レンガの模様をつけた外壁材。板を建物に張っていく 費用と工期を抑えやすい。柄や色の種類が多い。板のつなぎ目の手入れが必要
レンガタイル・スライスレンガ 焼き物のタイルや、レンガを薄く切ったもの(レンガスライス)を、建物の外壁に貼っていく 表面は焼き物なので、見た目や手触りが本物に近い。貼り方によって手入れの考え方が変わる
煉瓦積み・レンガ造 厚みのある煉瓦を、職人が1つずつ積み上げて壁をつくる 本物の煉瓦の質感。塗り替えがいらない。手間がかかり、対応できる会社が少ない

私たちIKEHOUSEが建てているのは、3つ目の中の「煉瓦積みの家」です。

同じことは、レンガ以外の外壁にも言えます。たとえば「塗り壁風サイディング」は、職人がこてで塗る塗り壁の風合いを、板の表面の凹凸で表したものです。本物の塗り壁とは、つくり方も手入れの仕方も違います。

レンガ調サイディングとレンガタイルにも、それぞれの良さがある

レンガ調サイディングは、工場でつくった板を張っていくので、工期が短く、費用を抑えやすい外壁材です。柄や色の選択肢が多く、施工できる会社も多いので、あとから補修を頼みやすいのも良いところです。

レンガ風のサイディングの外壁
※写真はイメージです

一方で、サイディングの表面の塗装と、板と板のつなぎ目を埋めるシーリング材は、年月とともに傷んでいきます。業界団体の日本窯業外装材協会も、塗装とシーリング材は永久的なものではないとして、定期的な点検と手入れを呼びかけています。サイディングを選ぶ場合は、将来のメンテナンス(塗り替えやシーリングの打ち替え)の費用も、あらかじめ見込んでおくと安心です。

レンガタイルやスライスレンガは、表面が焼き物なので、見た目は本物のレンガにぐっと近づきます。レンガの雰囲気を手軽に取り入れたいなら、よい選択肢だと思います。

「並べれば分かる」本物のレンガの違い

レンガ調サイディングの家を見て、こんなレンガの家に住みたいね、と話している方がいると、私は少し残念な気持ちになります。1軒だけを見ていると分かりにくくても、本物と並べれば、違いははっきり分かるからです。

煉瓦積みの壁とバルコニー
※IKEHOUSEで建てた家(施工事例より)

1つ1つ違う、工業製品ではない素材

煉瓦は、粘土を焼いてつくる素材です。焼き上がりの色や表情は1つずつ違い、同じものは2つとありません。IKEHOUSEの煉瓦積みの家では、1棟に8,000〜1万個ほどの煉瓦を、職人が1つずつ手で積み上げています。

工場で同じ型の柄をくり返しつくる外壁材とは、ここが大きく違います。私は本物の素材には、自然のものならではの力強さがあると感じています。家は寝るためだけの場所ではなく、毎日を暮らす場所です。だからこそ、その違いを大切にしたいのです。

1つ1つ色や表情の違う煉瓦を積んだ壁
※IKEHOUSEのモデルハウス「はじまりの家」の煉瓦の壁

本物が並んだら、街並みが変わる

私がよく思い浮かべるのは、家が5軒並んだときの景色です。

レンガ調サイディングの家が5軒並ぶと、1軒ずつデザインが違っていても、どこか建売住宅が並んでいるように見えてしまいます。同じ工業製品でできているからです。

ところが、煉瓦積みの家が5軒並んだら、その一角にはぐっと引き込まれるような存在感が生まれるはずです。1つ1つ違う煉瓦でできた家は、1軒の家を超えて、街並みそのものをつくってくれる。私はそう考えています。

レンガの家が並ぶ住宅地
※写真はイメージです

塗り替えがいらない、という良さ

見た目だけでなく、メンテナンスの面でも違いがあります。

煉瓦は高温で焼き上げた素材なので、紫外線や雨で色があせにくく、表面を塗り替える必要がありません。本物の煉瓦の外壁が「メンテナンスフリー」と言われるのは、このためです。IKEHOUSEでは、築15年の煉瓦積みの家を見ていただく見学会を開いたこともあります。年月がたつほど味わいが増していくのも、本物の素材ならではです。

私たちが煉瓦を「貼らずに積む」理由

煉瓦の外壁には、本物の煉瓦を薄くして建物に貼る方法もあります。けれども私たちは、基礎から積み上げる方法を選んでいます。

貼った途端に、手入れがいらないという煉瓦のいちばんの良さが半分になってしまうからです。貼り付けたものは、下地との接着や固定に頼ることになるので、年月がたつと、はがれる可能性をゼロにはできません。

煉瓦を「積む」外壁と「貼る」外壁のつくりの違いや、地震への備えは、「レンガの家は地震に弱い?「レンガ造」と「煉瓦積み」の違いとデメリット」で詳しく紹介しています。

実は、煉瓦積みの家を建てる会社は多くありません。レンガタイルを貼る家は多くても、煉瓦を積む家は、ハウスメーカーではほとんど手がけていませんし、工務店でも知らない人が多いと思います。広島県内でも、煉瓦積みの家を建てる会社はあまり見かけません。

手がける会社が少ないのには、次のような理由があるのだと思います。

  • 1つずつ積むので、手間がかかる
  • そこまでする必要はない、と考えられている
  • 煉瓦は構造的に弱い、と思われている
  • レンガの見た目がほしいなら、貼る方法で十分と考えられている

どれも、ひとつの考え方です。そのうえで私たちは、手間がかかっても、本物の煉瓦の良さがいちばん生きる方法として、積むことを選んでいます。

本物でなければいけない、ではない

ここまで読むと、IKEHOUSEは自然素材の家しか建てない会社だと思われるかもしれません。けれども、そうではありません。

今の家づくりでは、コンクリートの基礎をはじめ、自然の素材だけで家を建てることはできません。私も、自然素材だけで建てるべきだとは考えていません。ただ、同じ役目を果たすのなら、本物に似せたものより、本物を選んでほしい。特に、外壁や床のように、毎日目に入り、手や足が触れる部分には、本物を使ってほしいと思っています。

レンガが好きかどうかは、人それぞれです。近代的ですっきりしたデザインには、サイディングやコンクリートの外壁がよく似合います。IKEHOUSEでも、お客様のご希望に合わせてサイディングの家を建てています。

実は私も、最初からレンガが好きだったわけではありません。以前は、コンクリート打ちっぱなしの家のほうがかっこいいと思っていました。いろいろな素材を知り、家づくりを重ねるうちに、今の組み合わせにたどり着いたのです。煉瓦積みをお勧めするのは、私がレンガを特別に好きだからでも、もうかるからでもありません。いろいろ比べたうえで、今いちばん良いと考える組み合わせだからです。

まずは本物を見て、触って、比べてみてください

私がいちばんお伝えしたいのは、本物を選んでほしいということより前に、まずは本物を知ってほしいということです。フローリング柄の床と木の床、レンガ調の外壁と煉瓦積みの外壁。違いを知ったうえで選ぶのと、知らないまま選ぶのとでは、たとえ同じ答えを出したとしても、住んでからの納得感が違うはずです。

違いは、写真よりも実物のほうがずっと分かりやすいものです。IKEHOUSEのモデルハウスでは、煉瓦積みの外壁や無垢材の床、漆喰の壁を、実際に見て、触れていただけます。これまでに建てた家は施工事例で、見学会の予定はイベント情報でご覧いただけます。

漆喰の壁や無垢材の床が、数字では表せない住み心地にどう関わるかは、「UA値・C値とは?断熱等級との関係と、数字だけで家を選ばないためのポイント」で紹介しています。

家づくりを始める前に知っておきたい考え方は、「家は3回建てないと満足できない?注文住宅で後悔しない間取りの考え方」で紹介しています。

まとめ

この記事でお伝えしたポイントは、次の5点です。

  • フローリングが好まれるのは柄ではなく木の質感。フローリング柄の床材とは別のもの
  • レンガに見える外壁は、レンガ調サイディング、レンガタイル・スライスレンガ、煉瓦積みの大きく3種類
  • サイディングやレンガタイルには、費用や工期、デザインの幅といった良さがある。サイディングは塗装とシーリングの手入れを見込んでおく
  • 本物の煉瓦は1つ1つが違い、並ぶと街並みをつくる。塗り替えもいらない
  • どれが正解かではなく、本物を知ったうえで選ぶことが大切

家の素材は、建ててからは簡単に変えられません。レンガ調の外壁にするか、本物の煉瓦を積むか。迷ったときは、ぜひ一度、本物を見に来てください。お待ちしています。

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