木造で柱のない大空間はつくれる?倉庫・店舗を身近な木材で建てる「トラス構法」
倉庫や店舗、作業場を建てるとき、「中に柱のない、広い空間がほしい」というご要望はよくあります。そして、広い空間なら鉄骨造、と考える方が多いのではないでしょうか。
実は、IKEHOUSEでもこれまでは、広い空間をつくりたいというご相談には、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)をご提案してきました。IKEHOUSEは自然素材の家づくりが中心ですが、鉄骨造やRC造の建物も手がけています。
今は、木造でも柱の少ない大きな空間をつくれるようになってきました。その方法の1つが「トラス構法」です。この記事では、トラス構法の仕組みと、木造で柱なしにどこまで飛ばせるのかの目安、鉄骨造と比べた費用の考え方を解説します。
木造で柱のない大空間はつくれる?
木造でも、柱のない大きな空間はつくれます。ただし、住宅と同じ建て方のままでは難しく、つくり方の工夫が必要です。
これまで木造の大空間が少なかった理由
木造で大きな建物を建てること自体は、以前から物理的には可能でした。太く長い柱や梁、大きな断面の特別な木材を使えば、広い空間をつくることはできます。木造の大きな建物として話題になる競技場や高層の建物も、こうした特別な木材を使ったものが多くあります。
ただ、特別な木材は用意するのに費用も時間もかかります。そのため、倉庫や店舗のような事業用の建物では、広い空間が必要なら鉄骨造のほうが安く済む、というのがこれまでの考え方でした。
トラス構法とは:木材を三角形に組んで力を受ける
トラス構法(トラス工法とも呼ばれます)は、木材を三角形に組み合わせて、屋根などの重さを支える方法です。
三角形は、力がかかっても形が崩れにくい形です。1本の太い梁で重さを受け止めるのではなく、細めの木材を三角形につないで、力を何本もの部材に分けて受けます。そのため、1本1本は細い木材でも、全体として長い距離を柱なしで支えられます。

このような三角形の組み方を「トラス構造」といい、橋や鉄塔、体育館の屋根などにも使われている、昔からある技術です。木材で組んだものは「木造トラス」と呼ばれ、住宅の屋根の骨組みにも使われてきました。トラスという仕組み自体は、特別に新しいものではありません。
住宅と同じ流通材で組める
変わったのは、使う木材です。今は、一般の住宅に使われている105mm角や120mm角(3.5寸角・4寸角)の柱と同じような、市場に広く出回っている木材(流通材)を三角形に組んで、大きな空間をつくる方法が広がってきました。

IKEHOUSEが加盟するJBN・全国工務店協会でも、工務店が木造の戸建て住宅で培ってきた技術を生かして、住宅以外の低層の建物や中大規模の建物を木造で建てる取り組みを進めています。
流通材は、特別に注文する木材に比べて安く、早く手に入ります。林野庁の資料でも、地域で流通している木材を設計に生かすことは費用を抑える方法の1つとされ、流通量の多い小さな断面の木材を組み合わせて重ね梁や複合梁とすることで、大きな断面の梁と同じように長い距離を支えられること、長い距離を支える方法にはトラスもあることが紹介されています(林野庁「部材計画」)。
特別な木材に頼らず、身近な流通材で大きな空間をつくれるようになったこと。それが、木造で倉庫や店舗を建てる選択肢が広がった一番の理由です。
木造で、柱なしにどこまで飛ばせる?スパンの目安
柱と柱の間の距離を「スパン」といいます。倉庫や店舗を計画するとき、一番気になるのが、木造で柱なしにどこまで飛ばせるのか、ではないでしょうか。
流通材の1本の梁は、4m程度で計画する例が多い
住宅でよく使われる梁は、流通材として手に入る長さの関係から、4m程度までで計画されることが多くあります。日本住宅・木材技術センターが作成した小規模な倉庫・車庫の木造モデル設計でも、「梁は流通材として手に入る4mを超えないように計画する」という条件で設計されています(簡易な構造物等の木造化・木質化促進事業報告書)。
それより広い部屋をつくるときは、間に柱を立てるか、より大きな断面の梁を使うことになります。
トラスなら10mを超える空間の例も
流通材をトラスに組むと、1本の梁よりずっと長い距離を柱なしで支えられ、10mを超えるような大スパンも計画しやすくなります。国土交通省が開設した中大規模木造建築ポータルサイトで公開されている構造設計の実務書には、平屋の倉庫(床面積550㎡)を、一般流通材と既製品の金物だけで、柱のない空間として計画した設計例が載っています。小屋梁のスパンは11mで、この部分をトラスで設計しています(中規模木造構造設計の実務マニュアル(抜粋))。同じポータルサイトでは、メーカー独自のトラスに一般流通材を使い、12mのスパンをつくった木造倉庫の実例も紹介されています。
10mを超える幅があれば、車を並べて停めたり、フォークリフトで荷物を動かしたり、売り場を柱で区切らずに使ったりしやすくなります。
最大の幅は、建物の条件で変わる
では、木造で柱なしに最大何mまで飛ばせるのか。これには、一律の答えがありません。
飛ばせる距離は、屋根の重さ、雪がどれくらい積もる地域か、風の強さ、建物の高さ、屋根に設備を載せるかどうか、トラスの形や木材の種類などで変わります。同じ11mでも、ある建物ではできて、別の建物ではできない、ということが起こります。
そのため、実際に建てる建物で柱なしにどこまで飛ばせるかは、構造計算で確かめることになります。なお、2025年4月からは、延べ面積が300㎡を超える木造の建物は、2階建て以下でも構造計算が必要になりました(国土交通省:構造安全性の検証法の合理化)。倉庫や店舗のように床面積の大きな建物では、はじめから構造計算を前提に計画します。
IKEHOUSEでは、必要な広さと使い方をうかがったうえで、木造でどこまで柱を減らせるかを検討します。
木造でも大きな空間をつくれる理由は、「店舗・施設木造建設」のページでも紹介しています。
木造の倉庫・店舗は、鉄骨より安くなる?
木造で広い空間をつくれるとして、次に気になるのは費用です。
木造で費用を抑えやすい理由
一般に、木造で建築費を抑えやすい理由として、次のようなことが挙げられます。
- 材料:住宅と同じ流通材を使えば、特別な木材に比べて安く、早く手に入る
- 加工:住宅向けに整った、柱や梁を工場であらかじめ加工する仕組み(プレカット)を使える
- 基礎:木造は建物が軽いので、鉄骨造やRC造に比べて基礎を小さくできる場合がある
どこでどれだけ差が出るかは、建物の大きさや形、地盤などによって変わります。
IKEHOUSEの見方:流通材のトラスと、鉄骨・コンクリートの値上がり
広い空間が必要な建物では、木造にするか鉄骨造にするかで、コストに大きな差が出やすいとIKEHOUSEでは考えています。
以前は、広い空間を木造でつくろうとすると、太い柱や梁で無理に飛ばすことになり、かえって鉄骨造のほうが安くなっていました。今は流通材のトラスで飛ばせるうえ、ここ数年で鉄骨やコンクリートの値段がかなり上がっています。そのため、条件によっては木造のほうが安くできる場面が増えてきたと感じています。
こうした変化があるので、IKEHOUSEでは今、広い空間をご希望の方にも、鉄骨造だけでなく木造を含めてお見積もりをお出しできます。
必ず安くなるわけではない。同じ条件で比べる
ただし、どんな建物でも木造が鉄骨造より安くなるわけではありません。用途や規模、必要なスパン、防火の条件などによっては、鉄骨造のほうが合う場合もあります。木材の値段も、時期によって上がり下がりがあります。
大切なのは、同じ用途・規模・条件で、木造と鉄骨造を比べてみることです。IKEHOUSEは鉄骨造も手がけているので、「やはり鉄骨造で建てたい」という方のご相談もお受けしています。
木造・鉄骨造・RC造の用途別の費用の目安は、「店舗・施設木造建設」のページで比べています。
木造の倉庫・店舗を考えるときに確かめたいこと
木造で倉庫や店舗を建てることを考え始めたら、次のようなことを整理しておくと、相談や見積もりがスムーズです。
- 必要な広さと、柱をなくしたい範囲:何を置くのか、車を何台停めるのか、どこに柱があると困るのか
- 建てる場所:防火地域・準防火地域などの指定や、建物の用途・規模によって、求められる防火の性能が変わります
- 建てたあとの使い方:将来、間仕切りを変えたり、用途を変えたりする可能性があるか
- メンテナンス:木造を長く使うには、湿気やシロアリへの対策と、点検しやすいつくりが大切です
木造の倉庫・店舗の耐用年数や、長く使うためのメンテナンスの考え方は、「木造の耐用年数は何年?店舗・事務所の減価償却と、実際に使える年数の違い」で紹介しています。
店舗やオフィスの断熱と光熱費については、「店舗・オフィスにも断熱性能は必要?光熱費と、そこで過ごす人から考える」で紹介しています。
IKEHOUSEが木造の大空間に取り組む理由
木造の大空間は、まだあまり知られていません。倉庫や店舗を建てる方の多くは、広い空間なら鉄骨造、と考えて計画を進めています。IKEHOUSE自身も、これまではそうご提案してきました。
けれども今は、住宅と同じ流通材で、柱の少ない大きな空間をつくれるようになりました。木造の構造や木材の扱いは、IKEHOUSEが住宅づくりで毎日向き合ってきたことです。その技術を、倉庫や店舗、オフィスにも生かしていきたいと考えています。
「この広さを木造でつくれるのか」「木造と鉄骨造のどちらが合うのか」といった、計画の最初の段階からご相談ください。IKEHOUSEは、広島県近郊に対応しています。
まとめ
この記事でお伝えしたポイントは、次の5点です。
- 木造でも、トラス構法を使えば柱のない大きな空間をつくれる
- トラス構法は、木材を三角形に組んで力を分けて受ける、昔からある技術。今は住宅と同じ流通材で組めるようになった
- 流通材の1本の梁は4m程度で計画する例が多いが、流通材のトラスで11m・12mの柱のない倉庫の設計例・実例もある
- 柱なしで飛ばせる最大の幅は建物の条件で変わるため、構造計算で確かめる
- 木造が必ず鉄骨造より安いわけではない。同じ条件で比べることが大切
倉庫や店舗を建てる計画があり、広い空間が必要なら、鉄骨造と決める前に、木造でつくれるかどうかを一度比べてみてください。