木造の耐用年数は何年?店舗・事務所の減価償却と、実際に使える年数の違い
店舗や事務所、倉庫を建てるとき、構造を木造にするか、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)にするかは大きな判断です。木造を検討し始めた方からよく聞くのが、「木造は耐用年数が短いと聞くけれど、すぐに使えなくなるのでは」という心配と、「耐用年数が短いから、減価償却で節税になるらしい」という話です。
この記事では、木造の店舗・事務所・倉庫の法定耐用年数を鉄骨造・RC造と比べたうえで、税法上の年数と実際に使える年数の違い、減価償却の考え方を解説します。IKEHOUSEは広島で木造の家づくりを続けてきた工務店です。建てる側から見た、事業用の建物の構造の選び方もお伝えします。
木造の法定耐用年数は何年?店舗・事務所・倉庫の場合
法定耐用年数は、建物などの資産を何年かけて経費にしていくか(減価償却の期間)を、税法で決めた年数です。建物の構造と用途によって決まっていて、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。
用途別の法定耐用年数(木造・鉄骨造・RC造)
店舗・事務所・倉庫などでは、次のとおりです。
| 用途 | 木造 | 鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超) | RC造 |
|---|---|---|---|
| 事務所 | 24年 | 38年 | 50年 |
| 店舗 | 22年 | 34年 | 39年 |
| 飲食店 | 20年 | 31年 | 41年(※) |
| 工場・倉庫(一般用) | 15年 | 31年 | 38年 |
※RC造の飲食店は、延べ面積のうち木造の内装部分が30%を超える場合は34年
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
同じ事務所でも、木造は24年、RC造は50年と、倍以上の差があります。倉庫では、木造15年に対して鉄骨造31年です。
鉄骨造は、骨組みの鋼材の厚さで年数が変わる
鉄骨造(表の上では「金属造」)は、骨組みに使う鋼材の厚さで年数が変わります。上の表は、厚さが4mmを超える一般的な鉄骨造の年数です。厚さが3mm以下の軽量鉄骨造では、事務所22年、店舗19年、倉庫17年と、木造に近い年数になります。
見積もりを比べるときは、「鉄骨造」とひとくくりにせず、どの厚さの鉄骨かも確かめておくと、年数の比較がしやすくなります。
電気や給排水の設備は「建物附属設備」として別に償却する
建物の工事費には、電気設備や給排水・衛生設備、ガス設備といった設備の費用も含まれます。これらは「建物附属設備」として建物本体と分けて扱い、耐用年数は多くが15年です(国税庁の同じ表による)。
建物本体と設備をどう分けるかで、毎年の経費の額が変わります。実際の区分けは、顧問の税理士に相談してください。
法定耐用年数は、建物の寿命ではない
法定耐用年数は、あくまで税金の計算のための年数です。木造の事務所の耐用年数が24年だからといって、24年で使えなくなるわけではありません。
木造は、手入れを続けるほど長く使える
木造の建物は、手入れを続ければ長く使えます。たとえば奈良県の法隆寺は、現存する世界最古の木造建築といわれ、建てられてから1300年以上たった今も残っています。修理を重ね、傷んだ部材を直したり取り替えたりしながら使い続けてきたからです。日本には、ほかにも何百年も前の木造の寺社や古民家が数多く残っています。木造は、湿気の多い日本の気候の中で長く使われてきた構造でもあります。

IKEHOUSEでは、建てたあと何も手を入れないのであれば、RC造の方が長く持つこともあると考えています。一方で、コンクリートの躯体(骨組み)は、傷んでから部分的に直すのが難しい構造です。木造は、柱や梁、外壁などを部分ごとに点検し、手を入れながら使い続けられます。手入れを続けるほど長く使えるのは、木造の強みです。
「20年使えればいい」なら、なおさら木造が合う
事業用の建物は、ずっと同じ使い方をするとは限りません。事業の内容が変わる、店舗を移す、20年後には建て替えるつもり、ということもあります。
そうした場合も、木造は向いています。間取りの変更や増改築がしやすく、建て替えのときの解体費も、一般に鉄骨造やRC造より抑えやすい構造です。長く使い続けることも、決まった年数で建て替えることもできる。計画に合わせて使い方を選べることも、木造を選ぶ理由になります。
「償却が早いから節税」の前に考えたいこと
木造は法定耐用年数が短いため、「減価償却が早いので節税になる」と言われることがあります。間違いではありませんが、それだけで構造を決めるのはおすすめしません。
建物の減価償却は、毎年同じ額を経費にする「定額法」
建物の減価償却は、毎年ほぼ同じ額を経費にしていく「定額法」で計算します(今取得する建物の償却方法は、定額法のみです)。1年あたりの経費は、建物の取得価額を耐用年数でおおよそ割った額になります。
例えば、建物本体の取得価額が同じ3,000万円の事務所の場合、1年あたりの減価償却費はおおよそ次のようになります(説明のための仮の金額で、耐用年数ごとの償却率で計算しています)。
| 構造 | 耐用年数 | 1年あたりの減価償却費(目安) |
|---|---|---|
| 木造 | 24年 | 約126万円 |
| 鉄骨造(4mm超) | 38年 | 約81万円 |
| RC造 | 50年 | 約60万円 |
経費にできる総額は同じ。変わるのは「いつ」経費にするか
木造の方が、1年あたりに経費にできる額は大きくなります。ただし、最終的に経費にできる総額は、どの構造でもほぼ取得価額で同じです(帳簿には備忘価額の1円が残ります)。耐用年数が短いと、同じ額を早く経費にできる、というのが「償却が早い」の中身です。
利益が出ていなければ、節税にはつながりにくい
減価償却費で税金が減るのは、その年に利益が出ているからです。事業の立ち上げ期などで利益が出ていない年は、経費が増えても、その年の税金が減るわけではありません。
IKEHOUSEでは、事業者の方に「償却が早いから節税になります」と前面に出すことはしていません。税金の効果は、事業の収支がきちんと黒字になってこそです。木造の本当の強みは、用途や規模によっては建築費そのものを抑えられることにあります。建築費が抑えられれば、借入や返済の負担が軽くなり、収支の計画を立てやすくなります。その結果として、減価償却の効果も生かしやすくなる、という順番です。
減価償却や節税の具体的な扱いは、事業の状況によって変わります。必ず顧問の税理士に確認してください。
木造・鉄骨造・RC造の建築費の比較は、「店舗・施設木造建設」のページで紹介しています。
事業用の建物は、収支計画の中で構造を選ぶ
住宅と、店舗・事務所・倉庫では、予算の考え方がまったく違います。事業用の建物は、いくら借りて、毎年いくら返し、その建物でいくら売上が上がるか、という収支計画から予算が決まります。
構造を選ぶときは、耐用年数や減価償却だけでなく、次のようなことを並べて考えるのがおすすめです。
- 建築費と、そのための借入・返済
- その建物を何年使うつもりか(ずっと使うのか、決まった年数で建て替えるのか)
- 毎年の光熱費や、修繕・点検にかかる費用
- 減価償却で、毎年どれくらい経費にできるか
- 将来、用途を変えたり、建て替えたりするときの費用
IKEHOUSEでは、ご相談を受けたとき、まずどんな事業に、何年くらい使う建物なのかをお聞きします。そのうえで、木造が合うのか、鉄骨造の方が合うのかを一緒に考えます。建物の条件によっては、鉄骨造の方が合うこともあります。
店舗や倉庫の光熱費や、そこで過ごす人の快適さについては、「店舗・オフィスにも断熱性能は必要?光熱費と、そこで過ごす人から考える」で紹介しています。
長く使うなら、メンテナンスしやすい建て方を
木造の建物を長く使うためには、建てたあとに点検や修繕をしやすいことが大切です。
住宅には、長く住み継げる家の基準として「長期優良住宅」という制度があります。認定を受けるには、例えば木造では、床下や屋根裏に点検口を設け、床下の高さを人が入って点検できる330mm以上にすることなどが求められます(国土交通省の長期優良住宅のページ)。

IKEHOUSEは、こうした長く住み継ぐための家づくりを続けてきた工務店です。その考え方は、店舗や倉庫、事務所にも生かせます。点検口の位置や床下の高さ、傷みやすい部分を交換しやすい納まりなど、メンテナンスしやすい倉庫・事務所をつくることができます。
何百年も使える建物を建てたい、できるだけ費用を抑えたい、メンテナンスしやすくしてほしい。ご要望に合わせて、建て方を考えます。建てたあとの点検やメンテナンスも、同じIKEHOUSEにご相談いただけます。
木造で柱の少ない大きな空間をつくる方法は、「木造で柱のない大空間はつくれる?倉庫・店舗を身近な木材で建てる「トラス構法」」で紹介しています。
まとめ
この記事でお伝えしたポイントは、次の5点です。
- 木造の法定耐用年数は、事務所24年、店舗22年、倉庫15年。鉄骨造やRC造より短い
- 法定耐用年数は税金の計算のための年数で、建物の寿命ではない。木造は手入れを続けるほど長く使える
- 耐用年数が短いと早く経費にできるが、経費にできる総額は同じ。利益が出ていなければ節税にはつながりにくい
- 事業用の建物は、建築費・返済・使う年数・維持費を並べた収支計画の中で構造を選ぶ
- 長く使うなら、点検や修繕がしやすい建て方をしておく
店舗や事務所、倉庫を木造で建てられるか、自分の計画には木造と鉄骨造のどちらが合うのか。まだ決まっていない段階でも構いません。IKEHOUSEでは、計画のはじめから、設計、施工、建てたあとのメンテナンスまでご相談いただけます。