コラム

家は3回建てないと満足できない?注文住宅で後悔しない間取りの考え方

株式会社池芳工務店代表取締役の池田です。

「家は3回建てないと満足できない」。家づくりについて調べていると、一度は目にする言葉だと思います。1回目で気づいた不満を2回目で直し、3回目でようやく理想の家になる。それほど家づくりは難しい、という意味で使われています。

とはいえ、ほとんどの方にとって家を建てるのは一生に一度。3回建て直すわけにはいきません。

私たちIKEHOUSEには、先代から受け継いできた2つの言葉があります。「ご縁を大切に」と「失敗しない家づくり」です。この記事では、広島で注文住宅を手がけるなかで私がお客様と向き合うときに大切にしていることをもとに、注文住宅で後悔が生まれる理由と、子どもの独立や老後まで見すえた間取りの考え方をお話しします。

「家は3回建てないと満足できない」と言われる理由

私も、この言葉はそのとおりだと思っています。家づくりは、それだけ難しいものだからです。

土地も、周りの環境も、暮らしも1軒ごとに違う

たとえば車は、決められた幅の道を、決められたとおりに走れればよいものです。だから同じ規格のものを工場でたくさんつくることができます。

家はそうはいきません。土地の形は1つ1つ違い、日当たりや風の通り方、隣の家との距離といった周りの環境も違います。そして何より、そこで暮らす家族の生活がまったく違います。

工場で同じ家をつくって、そのまま置けばよいのなら、家はもっと安く、もっと規格化されていたはずです。けれども実際には、住宅は工業化・規格化が進みきらなかった業界です。国の資料でも、持ち家の木造戸建て住宅(在来工法)の約半数は、中小の大工・工務店が建てていると推定されています。家づくりが1軒ごとの仕事だからこそ、地域の工務店がこれだけ多いのです。

プロでも、毎回が勉強

土地も暮らしも違う以上、同じ正解はありません。私たちつくり手にとっても、家づくりは毎回が勉強です。

プロでもそうなのですから、初めて家を建てる方が1回目で不満をゼロにするのは、なかなか難しいことです。それでも、できるだけ後悔しない、失敗しない家づくりをしてほしい。私たちが「失敗しない家づくり」を掲げているのは、そのためです。

間取りの後悔を減らすには、「一度、想像で住んでみる」

注文住宅の後悔としてよく聞かれるのが、間取りです。間取りの後悔を減らすために、私がお客様に必ずお願いしていることがあります。

プランができあがったら、「一度ここに、想像で住んでみてください」とお伝えすることです。

朝起きてから夜寝るまで、自分がそこに住んでどう暮らすかを実際に考えてみる。そうすると、「ここに収納が欲しい」「この部屋はもう要らない」といった、図面を眺めているだけでは気づかないことが見えてきます。

見た目より、毎日の動き(生活動線)で考える

打ち合わせでは、見た目のかっこよさにひかれて間取りを選びたくなる場面もあります。そんなとき私は、その壁があると冷蔵庫に行くたびに遠回りすることになる、といったように、毎日の動きに置き換えてお話しします。

家のなかで好きな場所はどこか、どこで過ごす時間が長いか。生活動線や家事動線は、家族の数だけ違います。デザインはもちろん大切ですが、毎日くり返す動きに合っているかどうかが、住んでからの満足を左右します。

将来を見すえた間取り:老後は1階で暮らせるように

「想像で住む」のは、今の暮らしだけではありません。私たちは、子どもの成長とともに変えられる家、子どもが出ていったあとの暮らしまで考えた家づくりを大切にしています。

実例:夫婦2人の2階建てで、1階奥を将来の寝室に

IKEHOUSEで建てた、あるお宅の例です。

項目 内容
ご家族 ご夫婦2人
建物 2階建て。寝室は2階
将来への備え 1階の奥にあるランドリーとパントリーを、将来は寝室に変えられるようにした
構造の工夫 そこの壁は耐力壁(地震や風の力に耐える構造上の壁)にせず、将来、仕切り直して1部屋にできるようにした

今は2階の寝室で過ごしていても、年齢を重ねて階段の上り下りがつらくなったら、1階だけで生活が完結する間取りに変えられる。そのための準備を、建てる時点で済ませておいた例です。

色分けした間取り図と2階建ての住宅模型
※写真はイメージです

ポイントは、間取りだけでなく構造も将来に合わせてあることです。例えば、同じ壁でも、家の強さを支える耐力壁は、あとから取り払ったり動かしたりするのは簡単ではありません。将来変えたい場所には、最初から耐力壁を置かない設計にしておけば、将来の間取り変更がずっと楽になります。

老後を考えた2階建ての間取りで、最初に決めておきたいこと

老後の間取りを考えるとき、理想は平屋だと言われることもあります。けれども敷地の広さや予算によっては、30坪前後の2階建てを選ぶ方も多いはずです。2階建てでも、次の点を建てる前に考えておけば、老後の暮らしに備えられます。

  • 1階に、将来の寝室にできる部屋(または場所)があるか
  • トイレ・洗面・お風呂・洗濯など、毎日使う水回りが1階にそろっているか
  • 将来間取りを変えたい場所に、動かせない壁(耐力壁)が来ていないか

どれも、建てたあとで変えようとすると大がかりになりやすいところです。今の暮らしに合わせたプランができたら、10年後、20年後、30年後にもう一度「想像で住んで」みることをおすすめします。

子どもが巣立ったあとの暮らしまで考える

将来の変化は、老後だけではありません。

成人したお子さんのいるご家族の家を建てたときのことです。お子さんたちはいずれ独立するだろうと考え、それもふまえた間取りをご提案しました。実際、建ててまもなく、お子さんたちは次々と家を出ていきました。

子どもはまだ家にいるだろう、いつか誰かが同居してくれるかもしれない。家族の将来をどう思い描くかは人それぞれで、正解はありません。だからこそ私は、少し言いにくいことでも、先々の暮らしの変化を話題にしながら設計を進めるようにしています。

家づくりは、建てたあとも続く

家族それぞれに歴史があり、暮らし方の変化があります。それを長く見続けられるのが、この仕事の面白さだと私は感じています。

3世代にわたるお付き合い

こんなご縁もありました。

別の会社が建てた家に住むおじいさまから、リフォームのご依頼をいただいたのが始まりです。それからずっと、その家の手入れを私たちが見てきました。お子さんの世代は別の場所に住んでいましたが、おじいさまが亡くなったあと、今度はお孫さんから、この家に住むために大規模なリフォームをお願いしたいと声をかけていただきました。

おじいさまの暮らしと、お孫さんの暮らしは違います。同じ家を、次の世代の暮らしに合わせてどうつくり直すか。長く見てきた家だからこそできる工夫があります。

柱と梁を残して改修工事をしている古い木造住宅の室内
※写真はイメージです

リフォームの「かかりつけ」として

会社の規模が大きいと、異動などで途中から担当者が替わることもあります。私たちは地域の工務店として、建てたあとの点検や小さな修理、暮らしの変化に合わせたリフォームまで、同じ顔ぶれでお付き合いを続けています。

体のことを気軽に相談できる「かかりつけ医」のように、家のことを気軽に相談できる「かかりつけ」でありたい。「ご縁を大切に」という言葉には、そんな思いも込めています。

工務店とハウスメーカーの違いは、「工務店とハウスメーカーの違いは?価格・自由度・建てたあとの付き合いで比べる」で詳しく紹介しています。

「IKEHOUSEで建てれば失敗しない」わけではありません

ここまで「失敗しない家づくり」についてお話ししてきましたが、ご相談に来られたお客様に、私がはっきりお伝えしていることがあります。

「IKEHOUSEで建てたから失敗しない、というわけではありません」。

失敗しない家づくりのために大切なのは、どこで建てるかより先に、家づくりそのものを知ることです。

家づくりは何から始める?まず学び、体感する

家づくりを何から始めればよいか迷ったら、まずはいろいろなことを知るところから始めてみてください。工法や素材、住宅会社の違いなど、それぞれにメリットとデメリットがあります。それを知ったうえで、自分たちに合うものを選ぶことが、後悔しない家づくりへの近道です。

とはいえ、何から調べればよいのか分からない、という方がほとんどだと思います。そんなときは、私たちに気軽に聞いてください。メリットだけでなくデメリットも含めて、一緒に整理するところからお手伝いします。

家の決まりごとも、時代とともに変わります。たとえば2025年4月からは、原則としてすべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられ、2030年までにはさらに高い水準へ引き上げる方針も示されています(国土交通省)。今は「高い性能」とされている家が、数年後には当たり前になっているかもしれません。長く住む家だからこそ、今の基準だけでなく、これからの基準も知っておくと安心です。

そして、図面や数字だけでは分からないこともあります。IKEHOUSEでは、実際に泊まって暮らしを体感できるモデルハウスをご用意しています。構造見学会などのイベントも開いていますので、建てる前の「学び」の場として使ってください。

宿泊体感型モデルハウス「はじまりの家」のリビングと階段
※IKEHOUSEの宿泊体感型モデルハウス「はじまりの家」

外壁や床の素材を選ぶ前に知っておきたいことは、「本物のレンガと「レンガ調」の外壁は何が違う?素材を選ぶ前に知ってほしいこと」で紹介しています。

工務店は非効率。だから伴走できる

いろいろ学んで比べたうえで、私たちの家づくりに共感して選んでいただけたなら、そこから先はずっとお付き合いします。打ち合わせを重ねて一緒に家をつくり、建てたあとも暮らしの変化に合わせて手を入れていく。家づくりに伴走するということです。

正直に言えば、これはとても効率の悪いやり方です。たくさんの家を同じ仕組みで建てる大きな会社には、なかなかできないことでもあります。それでも私は、工務店だからこそできるこの非効率を大切にしたいと考えています。

まとめ

この記事でお伝えしたポイントは、次の5点です。

  • 「家は3回建てないと満足できない」と言われるのは、土地も環境も暮らしも1軒ごとに違い、家づくりが規格化できないから
  • 間取りの後悔を減らすには、プランができたら「一度、想像で住んでみる」。見た目より毎日の動きで考える
  • 老後を考えた2階建てなら、1階で暮らしを完結できるよう、将来の寝室と水回りの場所、動かせない壁の位置を建てる前に決めておく
  • 子どもの独立など、家族の変化まで見すえて設計すると、建てたあとも住みやすい
  • どこで建てれば失敗しない、というものはない。まず学び、体感してから選ぶことが、後悔しない家づくりへの近道

家づくりは、建てて終わりではありません。「自分たちの場合はどう考えればいいのか」と思ったら、まずはモデルハウスでの宿泊体感や、資料請求から始めてみてください。私たちは、その最初の一歩からお付き合いします。

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